あの私が
半年前、リーマスの副作用で文字が書けなくなり、パニックが起きれば目や口が勝手に動いてしまうような、いわゆる「限界」をさまよっていた。
学校に強制的に連れて行ってもらい道端で倒れたこともあった。通学路で倒れたときは警察に通報された。
バイトを辞め、サークルもやめ、学校にも行けず、人の家や病院との往来のみの生活。
「今日が死に日だ」とハンガーで首をくくろうとしたこともあった。衝動に身を任せて携帯を投げるおかげで壁に穴が開いた。
人に暴力を振ったことも少なくなかった。
罪を水に流すことはできない。流すべきではないんだとも思う。
二度と社会生活が送れないと確信し手帳もとった。
「限界」のなかで生き延びていく道を選んでいく準備を整えていた。
***
二週間前までは電車で通学なんてできないと思っていた。
案外脳みそは頼れるものがなければあきらめも早く、電車に乗り、歩き、バスに乗り、広いキャンパスの中をてくてく歩いて90分の拘束を受け入れている。
それが体にいいとか悪いとかではなく、そうしなければならないし、実際社会に溶け込むことが私にとって一番の薬であることが証明された。
身体が動く、一人で名古屋に行ける、人との交流を重ねて、多少の過ちは犯したものの人生に変動があったわけでもない。
明日も電車に乗る。ゆられながら古本を読む。音楽を聴いて、喧騒を少しだけ抑える。眠たければ寝る。自由に過ごす。
外で自由にできる事のすごさ、というものは、できなかった時間がなければ自覚できなかっただろう。
そういう意味では限界をさまよったことが無意味だったとは思わない。
二度と体験はしたくないけど。
バイトの面接が明日に控えている。単発だからクローズで行こう、体を見てもらえば虚弱なのは伝わるだろうから、相手のお願いを素直に聞かないように、ペースを崩さないように。いざとなれば手帳を見せて病気の説明ではなく、自分の体調の説明を相手に伝えよう。これも社会に出るまでの練習。自分のことを伝える練習をする。
そんなことを考えながら。
あの私が、バイトの面接に行くなんて!
きゃー!すごい!あなたそんなことまでできちゃうの!
と、私がぴょんぴょんはねている。
一方で。
畳に取り込まれかけていた私も消えているわけじゃない。
畳から半分だけ浮き上がって「調子にだけは乗らないで」と訴えかけている。
乗るもんか。乗れる身体じゃないことくらい3年もたてば分かる。
あの私が背中に寄り添っている。今の私はそれを無視したりはしない。
ということで、明日は行ってきますので。みなさんに良い報告ができたらいいな。
「バイトと勉強を両立する大学生」がゴールだったので、テープを切れるかもしれないな。
やりたいことが未来にできたから、頑張ろう。
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あの私が自炊をしたこともビッグニュースです。
1年後には驚くくらい美味しくてきれいな何かが作れているといいな。
ビフォーアフターして全員泣かせる。見てろよ。
焦りの味がするテャハハーン。
みなさんも良い夢を。おやすみなさい。