あんまり死なない方がいいですよ。

この一年で体験したことを遺しておく。

日常から切り離された

京都というと森見登美彦の小説が想起されるから、なんとなくフィクションの世界だと体が認識している。実際に降り立つと意外と京都っぽくないなと思ったり、一方で京都らしさが顔をのぞかせてその度にぴょんぴょん跳ねたりしていた。

もともとNUITOのライブを見に行く予定で立てていた算段が、インターネットのつながりで会うことになった人がいたりして非常に充実した二日間を過ごすことができた。二人でのんびり鴨川を眺めて「日常じゃないみたいだね」と話をしたりした。せっかくだからとじっとりした京都を黙々と歩いて京都大学吉田寮も見てきた。引きこもりが体を使うと当然眠気が来るわけで少しウトウトしたりもした。ご飯も美味しかった。書きながら思い出しても小説のワンシーンを思い出すような不思議な感覚に襲われる。

ともかく楽しかった。

自分の体がどうなってもあまり気にはしないというか、私で消費してくれるならどうぞというスタンスだから、若いうちは人に迷惑をかけないように消費していきたいと思ってる。こういうと怒ってくれる人もいるんだけど、でも私の人生だからあんまり気にしなくてもいいかもしれない。まあ他人が似たようなことしてたら心配になるけど。もちろん優しい自意識も何だかんだで死んでないみたいでたまに振り返ってはウッてなる。だからって一人に依存してよかった試しがないし、普通の生き方って逆に何かわからないし。

他人の優しさ、それが偽りでも嘘でも言葉にするとそこには確かに何かが宿っているような錯覚が起きて、少しだけ安心できるから。味見するだけならとびきり美味しい今を誰かに提供して、その感想をもらってニコニコできるならそれでいいかな。まあ、迷惑だけはかけたくないけど…。

 

NUITOはすごかった。場所が悪くて手元があまり見えなかったのは残念だったけど、小さな箱特有の一体感と、音が飛び交う密室が無音になる瞬間がたまらなかった。誰がいつ死ぬかわからないから、私も生きてるうちに生きてる人に会わないとな。帰りにキャスターを久々に買って、ライターをなくしたことを思い出して少し落ち込んだりした。

しばらくライブはないみたいだしあっても遠方だから次行けるかわからないけど、まあ生きてるうちに見れてよかったなと思った。

メトロもいい箱でした。不健康そうな人と治安の悪さがマッチしていて良かった。

 

京都をひたすら歩き、インターネットの人たちにオススメの場所を聞いたりした。全部は行けなかったから次は行けたらいいなと思う。

蕁麻草さんに教えていただいたエレファントファクトリーコーヒーは時間つぶしでお邪魔した。細い小道を入り、少し急な階段を登る隠れ家カフェで、深夜だから人も少なくてこれぞイマジナリー折衷庵…となるなどした。何が?

コーヒーがあまり飲めないので飲みやすいのを聞いて、わざわざ飲みやすいブレンドで作ってもらった。苦味よりも酸味が強くて、砂糖を入れなくても飲めたのは初めてだった。美味しいコーヒーは美味しいんだな。びっくりした。

閉店ギリギリまでいさせてもらってコーヒーのお礼と少し雑談をしながら見送ってもらった。「締めが終わったら飲みに行きませんか?」と言っていただけて「小説みたいなことが起きている…」と笑ってしまった。次行くときは飲みに行けたらいいなと思う。

深夜になると飲屋街はやたら治安が悪くなり、酔っ払いに声をかけられたり車から「大丈夫ですか?」と聞かれたりした。そっちが大丈夫なのかよ。

友人が電話してくれたりラインで暇に付き合ってくれる人たちのおかげで深夜の京都は賑やかに過ごすことができた。

甘やかされてるなあ。と実感した二日間。

こんなに楽しい街があるなら、もう少し生きてもいいかなと思った。

 

もともと人間嫌いだったのに歳を重ねるごとに人のことが大好きになる。会話が得意になったわけじゃないけど、人の話を聞くのは好きだ。言葉から汲み取れる感情もあれば、表情や皮膚から伝わる人生もある。自分の体を使ってその人の人生をじっくり味わうことができるなら多少しんどくてもいいかなって思えるのはこのせいかもしれないな。

人に話せるような華やかな人生もコミュニケーション能力もないから余計かもなあ。だからお酒に頼るし、タバコに頼ってるのかもしれない。この二つ、かなりコミュニケーションに使えることに気づいてしまった。

美味しいってのもあるんだけどね。私のタバコはキャスターだから、会いたくなったら吸ってください。多少私の味を感じるんじゃないかしら。少なくとも私はその人が吸ってたタバコは特別なものだと思ってる。こんなこと話してたらタバコ吸いたくなってきたな。ライター!!

 

何はともあれ今は帰路です。

明日からまた日常が始まるし、実は全部夢だったって言われても納得してしまうような数日だった。主人公したなあ〜〜という気分。

悪くないね。楽しかったよほんとに。

お世話になった人、ありがとうございました。

また行くと思う。京都療法、アリですね。笑